――急拡大と再編が同時に進むアジア最大級の空のマーケット――

コロナ後、アジアで最も勢いを取り戻した航空市場の一つが中国だ。

2023年以降、国内路線はすでにほぼ完全回復し、むしろ“過去最大”の旅客数を記録。

ビジネス需要の回復、観光政策の緩和、そして巨大な人口ボリューム。

これらが一気に噴き出し、中国の空は再び混み合い始めている。

■ 内需の強さが支える“超回復”

中国航空市場の特徴は、とにかく国内線の強さだ。

北京~上海のような幹線だけでなく成都・重慶・昆明といった内陸都市もハブとして存在感を高めている。

多くの航空会社が新規路線を開設し、地方空港も拡張を続け、国内線は年間で数十億人規模の巨大市場へ成長している。

この強い内需が、外部環境の影響を受けても市場を底支えしている点は、他国にはない大きな特徴だ。

■ 国際線の回復は“着実だが慎重”

国際線に目を向けると、回復速度は国内に比べてややゆるやかだ。

日本・韓国・東南アジアとの路線は比較的早く戻った一方、欧米との便は依然として制限や調整が続く路線も多い。

それでも2024年以降、中国各社は欧州復便を相次いで発表し、長距離路線の回復がはっきりと見え始めた。

航空需要は着実に戻り、以前の“世界のハブ”としての存在感を取り戻しつつある。

■ LCC台頭:春秋はアジア圏で圧倒的存在へ

中国の航空市場で最近特に目立つのはLCC(格安航空会社)の台頭だ。

春秋航空は安全性・運航効率の高さで評価され、日本・韓国路線ではすでに“アジアの有力プレイヤー”として定着。

若い旅行者の増加、節約志向、そして短距離国際路線の需要拡大を背景にLCCの市場シェアは明確に拡大している。

大手エアラインが長距離路線や高付加価値サービスへ振り分ける一方、LCCは中国・日本・東南アジアを結ぶ「日常的に使いやす

い空」をつくりつつある。

■ 巨大な市場ゆえの課題も

一方で課題もある。

空港インフラの混雑、国際政治環境の影響、燃油費の高騰、パイロット不足とどれも解決に時間を要する問題だ。

特に主要空港の過密化は深刻で、遅延や運航調整は日常的に発生している。

それでも、中国は航空インフラの拡張スピードが速い。

大規模な空港新設、地方空港の拡張、航空管制の改革など、改善に向けた施策は着実に進みつつある。

■ “世界最大級の空”はこれからも進化する

中国の航空市場は、急成長と調整が同時に進むダイナミックな段階にある。

国内線の強さ、国際線の復活、LCCの台頭、巨大都市圏の再編――そのどれもが、今後のアジア空運の方向性を大きく左右する。

「どこへ行くか」だけでなく、「どんな空をつくるか」。

中国航空の動きは、この先も世界の視線を引きつけ続けるだろう。